心臓血管外科
当院の心臓血管外科は、三重大学胸部心臓血管外科の関連病院として、主に高度な末梢血管手術を専門的に行うために2016年7月に開設されました。
近年は医療の高度化や専門分野の細分化により、すべての心臓血管外科領域の治療を三重大学病院で行うことは困難です。
心臓・胸部大動脈手術には人工心肺装置などの大掛かりな設備や多数のスタッフが必要不可欠ですが、末梢血管外科手術はそのような設備を必要としません。一方で、急性動脈閉塞に対する血行再建術や大出血に対する止血術など、医療の迅速さや、フットワークが治療の成否に直結します。また、慢性動脈閉塞に対する血行再建術などは、患者さんごとの長期的なライフスタイルにあわせた治療戦略を考え、時には長期的な入院によるリハビリ治療も必要となります。
当院の環境はこれらの末梢血管外科診療に必要な要素を満たしており、患者さんに質の高い医療を提供できると考えております。
県内で、膝下から足首にかけての動脈バイパス術(遠位バイパス : Distal Bypass)に最も力を入れている施設でもありますので、中勢地区のみならず、県内の血管疾患でお困りの患者さんのお役にたてるよう努力してまいります。
心臓血管外科 部長
小暮 周平
診療時間
診療科目や専門外来によって、診察可能な日時が異なります。事前にご確認ください。
外来診療担当表
対象疾患
末梢血管障害(PAD)、閉塞性動脈硬化症などの慢性閉塞性動脈疾患
動脈塞栓症 などの急性閉塞性動脈疾患
腹部大動脈瘤、腹部内臓動脈瘤、などの 動脈拡張性疾患
血管損傷、仮性動脈瘤などの外傷性血管疾患
急性大動脈解離、大動脈炎、動脈感染、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、うっ滞性皮膚潰傷、シャントトラブル など
当院の治療について
外来治療
当院の外来では、歩くと足が痛い(間欠性跛行)、足が冷える、色が悪い、足にできた傷が治らない、足の指が黒ずんできた、足がだるい、足がむくんできた、足にボコボコができてきた、などの下肢の血流異常が疑われる症状に対して検査を行っています。
ABI検査は四肢の血圧差を測定し、動脈の血流異常を推定します。
動脈エコー検査では、足の付け根から膝下までの血管内の血流を超音波で測定します。静脈エコー検査では、静脈内の血栓の有無、破壊弁の存在など静脈機能不全の有無を検査します。
造影剤を用いたCT検査では、腹部から膝あたりまでの瘤化や閉塞といった血管性状を評価します。
病気の程度によって生活習慣の改善(禁煙や食事療法)、薬物治療(抗血小板薬、血管拡張薬など)を選択します。また大動脈瘤などの無症状の疾患に対しては半年~1年ごとに定期検査を行い、適切な手術のタイミングを決定します。
下肢静脈瘤、うっ滞性皮膚潰傷に対しては、弾性ストッキングや弾性包帯による装着指導等を行います。
フットケア外来
上記のような足の症状に対して、定期的に医療者(医師、看護師、理学療法士など)が介入して足の状態をよく保つための協力をする外来です。
フットケア専門ナースによる処置だけでなく、患者さん、ご家族様に対して日々のケア方法も提案します。傷の処置や病状進行の疑いがある場合は医師(心臓血管外科医、循環器内科医、形成外科医など)による診察や処置を行います。
入院治療
外来で判明した疾患に対して手術にて治療を行います。
大掛かりな手術になる場合は、三重大学腹部心臓血管外科と連携して心臓血管外科医の派遣協力を受けています。
手術の方法については、疾患の解剖学的位置や程度、患者さんの体力など医学的背景だけでなく、社会的背景もふまえて治療方針を提案します。時には治療法の選択肢を提示して、患者さんの納得のいく治療法を一緒に考えます。
血行再建術
動脈閉塞で下肢に十分な血液を送れない状態の方には血行再建術(血流回復させる手術)を行います。
ガイドワイヤー、カテーテルといった器具を血管の閉塞した箇所まで運び、血管内から拡張させ再開通させる「血管内治療」と、皮膚を切開し閉塞前の血管と閉塞後の血管を代用血管でつなぎ、血流を迂回させる「バイパス手術」があります。
また、バイパス術には「人工血管」を使用する場合と自身の血管である「自家静脈」を採取して使用する場合があります。
近年では遠位バイパス術(Distal Bypass)と呼ばれる、膝下から足首以下の血管に対するバイパス術も成功率が上がってきており、当院でも必要に応じて行っています。手術自体の難易度が高いことや、術前、術後の頻繁で長期的なケアが必要なことから、本術式を行える施設は多くありません。しかしこの手術によって、今まで下肢切断を余儀なくされていたような方の足を救い、社会復帰していただくことが可能となっています。
遠位バイパス術(大腿動脈 ー 腓骨動脈バイパス術)
遠位バイパス術(膝下膝窩動脈 ー 足背動脈バイパス術)
動脈瘤切除術
大きな動脈瘤があり、破裂による大出血のリスクがある方には動脈瘤の治療を行います。
この方法にも、足の付け根の血管から動脈瘤までガイドワイヤー、カテーテルを進めて血管の内側から動脈瘤をカバーする血管内治療「ステントグラフト内挿術」と、開腹して動脈瘤の前後を遮断し、直接動脈瘤を切除し、人工血管に置き換える「人工血管置換術」があります。
下肢静脈瘤手術
通常命に関わることのない下肢静脈瘤ですが、生活に困難を生じている場合は症状改善のために手術を行います。
現在は血管内治療が第一に勧められる治療法であり、機能不全を起こした静脈にカテーテルを通して焼灼します。当院では1470mmレーザーを使用します。
術前検査にて血管内治療が困難と判断された場合は、機能不全を起こした静脈を外科的に引き抜く「静脈ストリッピング手術」を行います。
その他の手術
急性動脈閉塞や血管の破綻による大出血の際は緊急で「血管修復術」を行います。
血管穿刺後の仮性動脈瘤や透析患者のシャントトラブルなど、他疾患治療に伴う医原性の血管障害に対して、近隣病院からの要請を受けて迅速に対処することもあります。
実績
資格等
医師の専門性資格
[ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格 ]
心臓血管外科専門医
日本外科学会専門医
日本脈管学会認定脈管専門医
麻酔科標榜医
その他資格等
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医
腹部大動脈ステントグラフト内挿術実施医
日本血管外科学会認定 血管内治療医
心臓血管外科 修練指導者
医師紹介
得意分野 FIELD
腹部・内臓動静脈、四肢末梢動静脈に対する外科治療及び血管内治療
患者さんへのメッセージ MESSAGE
病気による不安を少しでも和らげられるように、丁寧な病状説明を心掛けております。
当科の領域で不明な点がございましたら、いつでも気軽にご相談ください。