【臨床工学技士×診療放射線技師】 EVARでのチームワーク! ~腹部大動脈瘤について~
今回は臨床工学技士と診療放射線技師が共同でコラムを担当いたします。
私達、臨床工学技士と診療放射線技師が日々のカテーテル治療において、医師、看護師と連携して行う治療のひとつに腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(通称:EVAR)というものがあります。
EVARとは?
EVARとは腹部大動脈瘤(通称:AAA)に対する低侵襲な治療法の一つであり、ステントグラフトと呼ばれる金属製のチューブ(バネ状の金網=ステントに防水性シートグラフトを巻き付けたもの)を、腹部大動脈瘤の拡張した部分に挿入し、動脈瘤の破裂を予防することを目的としています。
このステントグラフトは、カテーテルから血管内に留置されることで瘤内の圧力を軽減し、破裂の危険性を低減する効果があります。
従来の開腹手術に比べ、患者さんに対する負担を軽減することができる治療法です。
👆 EVAR治療の前後の画像。ステントグラフトが血管内に挿入され、今にも破裂しそうな大動脈の膨らみが改善されました。
治療の計画
手術前に実施される検査の一環として、医師からの指示に基づき、診療放射線技師が造影剤を用いたCT検査を行います。
取得したデータは、専用の解析ソフトを使用して身体の状態や血管形態の評価が行われます。
その後、臨床工学技士に検査データを共有し、手術時に必要な物品の準備や医師の手技を円滑に進めるための計画を立てます。
そして治療に携わる医師、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師がカンファレンスを行い、手術計画を確認し、より安全かつ正確で、より短時間で手術を終了できるように努めています。
このように当院では手術に至るまでの検査・診断・治療計画において、臨床工学技士と診療放射線技師をはじめ、医師、看護師と共に連携し、チームとして治療に取り組んでいます。
[写真] ㊧ 診療放射線技師 |㊥ 心臓血管外科 小暮部長|㊨ 臨床工学技士
「僕たちのチームワークはバッチリです!」
【先生、教えて!腹部大動脈瘤(AAA)とは?】
腹部大動脈瘤(AAA)は、大動脈が部分的に拡張肥大した状態のことをいいます。
血管の壁が弱くなることから、放っておくと破裂する危険性が高まります。
破裂の危険性が高くないと判断される場合(直径4~5cmまで)には、内科的(保存的)治療が選択され、経過観察が行われます。
開腹手術で拡張した動脈瘤を人工血管に置換する方法以外にも、高齢などの理由により外科的治療(開腹手術)のリスクが高い場合、ステントグラフト内挿術(EVAR)が選択されることがあります。
大動脈瘤はほとんど症状が現れないため、症状から予兆を知ることが困難です。ここに大動脈瘤の恐ろしさがあります。
つまり無自覚なまま病状が進行し、突然動脈瘤が破裂する可能性があり、最悪の場合は死に至ります。
このような大動脈瘤に対処するためには、定期的な診察・検査が重要です。特に高血圧、高脂血症といった動脈硬化を進行させる疾患を持っている方や、過去に動脈硬化による血管病を経験した方は、心臓血管の検査を行い、早期発見を心がけましょう。
また食生活の改善や禁煙などの努力により、動脈硬化の進行を防ぐことも予防に繋がります。
気になる点やご不安な点がありましたら、心臓血管外科までお気軽にお声がけください。